「全てを失った人は、どこへ行けば良いんだろう…?」
その疑問の答えはここだ!!笑
皮肉たっぷりなブラックコメディをニヤニヤ楽しもう
クルーのみんな、調子はどうだい?
曇り空のシアトルで今日もぼんやりと酒を呑むお兄ちゃんこと、航海長デイビッドだ。
少しずつ暖かくなってきた今日この頃、いかがお過ごしかな?
俺としてはもうすぐ半ズボンの季節がやってくるということで、ワックワクの毎日だ。
「いくつなっても半ズボン、心にいつでも半ズボン、そんな大人になりたいわ」
これを俺の座右の銘にしてもいいくらい、俺は半ズボンが大好きだ。
メロコア好きなもんで、ディッキーズの太い半ズボンを毎年履きまくっているのだが、
丈夫すぎて買い換えるタイミングがわからない。
しっかりしているワークウェアは最高だが、あんまり丈夫なのも考えものだな
…さ〜て!笑
今日も俺の好きな映画の紹介をしよう。
今回はコメディ、しかし実はイヤミたっぷりな、ブラックなやつで行くぞ!
今日紹介するのは「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!」(1999、米)だ。
邦題はトホホな感じだが、原題は「Election」、つまり「学校選挙」ってとこだな。
名匠アレクサンダー・ペイン監督の初期作で、主演はマシュー・ブロデリックとリース・ウィザースプーンだ。
あらすじ
アメリカの田舎町で、高校の歴史教師を務めるマッカリスター。教師仲間や生徒にも信頼され、マイホームと奥さんにも恵まれた彼は、順風満帆な30代。
そんな彼の女生徒のひとり、トレイシーは“できすぎる”女の子。成績優秀なのはもちろん、校内放送女子アナ、卒業アルバム制作委員など、学校の名誉ある地位を独占するハイパー女子高生だ。
しかし彼女はかつて問題を起こしていた。マッカリスターの同僚教師デイブ(!)と男女関係になり、デイブをクビにまで追い詰めたのだ。そんなわけで、マッカリスターはトレイシーをあまり快くは思っていない。
そんなトレイシーが学校選挙に立候補し、生徒会長を目指すという。マッカリスターはそんな彼女を失脚させるべく、傀儡の対抗馬(運動部のボンクラ)を立て、当選を阻止しようとするのだが…!?
↑予告(英語)
↑予告、というか日本語吹き替えでのワンシーンですな
デイブ的イイねポイント①道徳的にアウトなヤツばっかり!恐ろしきブラックユーモア
「田舎町の高校にて、先生と生徒がどーのこーの…」
というなんの変哲もない舞台設定ながら、実はタブーと皮肉に満ちた過激な作品だ。
主人公の先生or女生徒による、タブー行為を列挙するだけでも…
女生徒は、妻子持ち教師デイブ君と不倫→デイブ君クビ&離婚。女生徒は母(弁護士)の力添えもあり、無罪放免。
先生は、妻を持ちながらも、よそのバツイチママに下心あり→誘惑し、一線を超える
先生は、女生徒にも下心を抱いてしまい、ヤラシイ妄想をする
先生は、女生徒に下心を抱きつつも、彼女が優秀すぎてムカつくので、嫌ってもいる。「彼女がこのまま出世街道を歩んでいくと、将来ヒトを踏みにじる権力者になるはずだ!俺が止めなければ!」というどうかしている義務感を抱き、彼女の生徒会選挙当選を妨害しようとする。→教師としては絶対タブーの妨害行為に及んでしまう
メインキャラでもこんな感じなのに、
他にもサブキャラのバカさ加減、幼稚さ加減も重なり、「え、コイツら道徳的にも倫理的にもやばくね?」というキャラばかり。
(「道徳と倫理」…映画を見た人ならニヤリとする話だね)
このタブーと皮肉を、全てギャグにしているのがこの映画のいいところ!
そしてテンポは軽快、しかもキャラそれぞれ愛嬌あるもんだから、軽いノリでドツボに落ちていく悲喜劇展開でも笑いながら見れてしまうから困ったもんだ!
アレクサンダー・ペイン監督の初期作品では、こう言った市井の人々のタブーと皮肉に満ちたブラックコメディが多かったな(市民ルース、本作、アバウト・シュミット)。
しかしその後、ここに主人公の成長も盛り込まれ、最後には感動して泣けるような作品が作られていく(サイドウェイ、ファミリー・ツリー、ネブラスカ)。
ちなみに最新作の「ダウンサイズ」は、SFながらも、皮肉の要素が強めの寓意に満ちた作品となっており、ヒット云々よりも評価の非常に高い監督となってごじゃります。
デイブ的イイねポイント②さりげないけど、凝りまくりの画面作り!
アレクサンダー・ペイン監督は、何気なく捉えている映像の中にも、キャラクターを象徴するようなモチーフを巧みに入れている。
主人公のマッカリスター先生は、曲線および円をモチーフとしたという。
このモチーフを、着るもの、食べるもの、歩く道のり、セリフの端々などにさりげなく入れ込みまくっているのだ(例えば、映画の冒頭ではマッカリスター先生はぐるぐると陸上トラックを走り続けて円を描き、生徒と語るシーンで黒板に描く図像はまん丸の果物、おまけにつけているネクタイの模様は水玉模様だ。)
「リンゴだけの中にもオレンジが入って選択のチャンスが生まれる…、そんな生徒会選挙がいいじゃないか?」何個も円を描くマッカリスターのネクタイは水玉模様。
このモチーフで、彼のゆがんだ人間性と、出口にたどり着けない宿命とかってものを表しているんだそうだ。
(ちなみに、対するトレイシーは直線のイメージ。彼女の登場するシーンでまっすぐな机の脚を入れ込んだりして、ビシッとしすぎている彼女の性格をそれとなく表しているとか)
またこの作品は「ゴミ」が大きなテーマでもある。
人物たちはみんな何らかの失敗をしていくのだが、その理由には全てゴミが関係している。それを暗示するように、ゴミ箱、ゴミ捨て場、清掃人などなど、ゴミ関係の何かが何気無いシーンでも画面に入り込んでいる。
なお、映画の最後の最後にも、マッカリスター先生の背景にゴミをこっそり映り込ませ、「立ち直ったかに見えた彼だが、実は失敗のきっかけであるゴミに追われ続けており、因果から抜けきれないのだ!」ってことを表しているのだとか。恐ろしい徹底ぶり!
他にも教師の象徴であるりんご、不能性を表すくすんだ色使いの家具、生命力と豊かさを意味する植物などなど、何気無い画面の中にも、ペインが考える象徴的な何かを散りばめているそうだ。
あんまり難しいことはわからないけど、映像だけでキャラクターを表現するこういったやり口こそ、「映画的表現」と言えるんではなかろうかな。
デイブ的イイねポイント③素晴らしいエンディング…、なのか!?
これを読んでいるあなたも思い出してくれ。
大失敗をしてしまい、路頭に迷ってしまった、あのときの気持ちを。
頭を抱えながら、こういった疑問を抱いただろう。
「人はすべてを失ったらどこに行けばいいんだろう…?」
なんとこの映画のエンディングは、この問いに対してさわやかな声で「こちらにどうぞ!」と声をかけてくれるのだ!!
や~よかった!
この映画ではマッカリスターは大失敗をし、全てを失うが、なんとかやり直すエンディングを迎える。
一見、新たな環境で再び軌道に乗ったかに見えたマッカリスター。
しかし前項でも記した通り、実は宿命からは逃れられていない。
この宿命を示すように、冒頭と円環構造をなすラストも巧みだ。
一安心させて笑わせつつも、ちょびっと薄ら寒くさせる…、よくできたブラックコメディだね!
ということで、いかがだったかな?
もうすぐ長期公開(ツアー)もあるし、クルーのみんなと一緒に漁する日も近いな。
漁港(ライブ会場)で会えるのを楽しみにしているぞ!
それではまた!
Be Excellent to Each Other!
(余談1:別エンディングがあった!)
この映画のマニアがどれくらいいるか知らないが、その方向けの情報を一つ。
なんとこの映画には別エンディングがあったのだ!
youtubeの解説によると、「最初は原作小説に近いこのエンディングで撮影されたが、テスト試写での観客の反応がよくなかったので、改めてエンディングを撮り直し、置き換えられた。公開の12年後にフリーマーケットで偶然このVHSが見つかるまでは、このオリジナルエンディングは日の目を見ることはなかった」のだとか!
当然DVDには入ってなかったので、俺もこの映像をYouTubeで発見した時はおお~!となったなぁ。情報化社会バンザイ!
このオリジナルエンディングは、公開版に比べると少し地味かなぁといった印象だが、実は恐ろしい。
マッカリスターとトレイシーの和解に見せかけて、「事件が終わった後だというのに、マッカリスターに力づくで敗北宣言をさせ、謝罪をさせる」という、トレイシーによるひど~い確認行為を描いているのだ!
これはこれでブラックな話よ…。
(ちなみにここでもちゃ~んとゴミがマッカリスターの行く手を阻んでいます笑)
(余談2:吹き替えが最高!)
俺はこの作品を見る時はたいてい日本語吹き替えで見る。
それぐらいこの吹き替えが大好きなのだ!
マッカリスターを藤原啓治さん(クレヨンしんちゃんのひろしね)、トレイシーを大谷育江さん(ワンピースのチョッパーの人よ)があてていて、軽妙なノリを付加していて笑いも倍増!最高に良い仕事です。
あと純朴な運動部員のポール君を演じる遠藤純一さんも最高。原語よりも純粋さが際立って感じられます。
みんなもこの映画は吹き替えでみよう!
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