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デイブの映画話6 "スカーフェイス"

悪党様にお休みを言いやがれ!

パチーノ、気合いとfワードで闇社会の頂点へ!

 

クルーのみんな、調子はどうだい?


気づけばもう8月も終盤。月日の流れる早さには、やんなっちゃうな

 

みんなには「夏といえばコレ」と言うお楽しみはあるかな?

海だ山だ、花火だスイカだと色々あることだろう。


映画好きな俺のお楽しみといえば、涼しい室内(映画館含む)にて、猛暑映画を見ること!

猛暑映画、と言うのは俺の造語なのだが、要は「映像の中がとにかく暑そうな映画」だ。


例えば「激突!」(1971)。荒野に佇むダイナーで、汗と脂で若干ギトギトな顔をしたおっさんたちのシャツにじっとり汗がしちゃったりして、最高だ。

「ドゥザライトシング」(1989)もいい。酷暑のブルックリンで、スポーツウェアに身を包んだ若きスパイクリーが、ピザを運んだり氷プレイを楽しんだりしつつ、徐々にテンションが上がっていく構成も素晴らしい。

あとは「狼たちの午後」や「悪魔のいけにえ」とかもいい感じだよな。


ちなみにこの手の猛暑映画は、真冬に観るのもオツなもんだ。みんなもぜひトライしてみて欲しいね

 

さて、今日も俺の好きな映画の話だ。

今回は、俺の大好物なジャンルである、ギャングものの傑作を紹介しよう。


 

今回紹介する作品は「スカーフェイス」(1983、米)。


監督は「ファントム・オブ・パラダイス」」等々のブライアン・デ・パルマ、主演は俺たちのアル・パチーノだ!なお、本作は1932年の「暗黒街の顔役」という作品のリメイクとなっている(さらに21世紀版のリメイク話も進行中だとか・・・)。



あらすじ

1980年マイアミ。キューバ移民の青年トニー・モンタナは、学も金もコネも仕事もなかったが、気合いだけはあるチンピラだった。そんなトニーは、ギャングの下っ端の鉄砲玉仕事を受け持つところから始め、徐々に闇社会の頂点へ上っていく。やがて自分の組織を率いるボスとなり、コカインビジネスで大いに成功するものの、自らもコカインに溺れていき、転落していく…



↑予告(英語)


↑劇中のfワードシーンのみを集めた、衝撃の日本版ブルーレイ予告!


デイブ的イイねポイント①限界までブチ上げろ! 極彩色に彩られたド派手なピカレスクロマンのクラシック!

この映画は端的に言えば、「育ちが悪い人が、悪いことで成功した後、転落する」話だ。


こういう特色をもった小説などをピカレスクロマンと言うが、本作はその仲間であり、ギャング映画ではよくあるストーリーだ。


そんな中でも、本作ならではの特徴を挙げるとすれば、”ケバさ”だ。


この映画は、とにかくケバい。

シンセ多用の劇伴、原色バキバキの色使い、そしてデパルマの絢爛豪華な映像テクニックが組み合わさり、ゴテゴテしたド派手さ!


栄華を極めるトニーを描いた最高のモンタージュ!金を儲けまくり、豪邸を手にし、ボスの奥さんを奪って結婚し、虎も飼っちゃうぜ!曲も最高!Push It To The Limit!!

 

しかし、無意味にケバいのではない。このケバさには意味がある。

それは主人公トニーのキャラクターと関連している。


あらすじの通り、トニーは何も持たない、ストリートたたき上げのドチンピラだ。

厳粛で気品高いファミリーや、組織の固い掟でつながる絆など、何もない。

汗まみれのアロハシャツを着たトニーは、気合いと根性だけで、力づくで闇社会の階段を登るのだ!


そんなトニーの背景には、流麗なオーケストラや重厚な色使いよりも、このケバい演出がよく似合うわけだ。「今は地べた這いつくばってるけど成り上がってやんぜ!」というトニーの“ストリート叩き上げのドチンピラ感”にはしっくりくるケバさ。


要は、今で言うDQN?みたいな風情を少し足すことで、泥臭さが出てくるのだ。


このケバいタッチは、80年代らしいとも言えるが(最高なシンセミュージックを手がけるは、「フラッシュダンス」(1983)のジョルジオ・モロダー)、過去のギャング映画、たとえば「ゴッドファーザー」のような気品溢るるマフィア映画で用いられた重厚な色使い・壮大で美しいフルオーケストラなどと対比してみると、この映画のテイストをよく示していると言えるだろう。

 

そして、この映画は、血みどろだが、見ようによっては、爽やかな映画とも言える。


なんにも知らなくて何が悪いとや!とばかりに、何の迷いもなく、がむしゃらに自分の可能性をドンドン伸ばしていくトニーの姿をみていると、観客は、ある種の痛快さ、爽快さが感じることだろう。


そして、「初めは何にも持っていなくたって、人間その気になればどこまででも上りつめられるぜ!」と勇気をもらえるのだ(この人は悪者ですが笑)。

まさにPush It To The Limit!


みんなも、限界…いやその先まで、自分の可能性をブチあげろ!



デイブ的イイねポイント②偽善は許さぬ! ”下品な正直者”か、“お上品な嘘つき”か!?

あらすじんとこに貼った動画の通り、この作品は公開当時「映画史上最もfワードを多用した作品」だったとか。


その数207回!上映時間が170分だから、だいたい1分に1回は言っている計算だな。


とりわけトニーはとにかく口汚い。ほぼすべてのセリフにfワードがくっついている。


ただ、ここまでfワードを盛り込みまくっているのは、単純に露悪的にするためではなく、トニーのキャラクター付けのための必然もあるだろう。


 

トニーは、とにかく正直な男だ。


怒りやムカつきの感情をまったく隠さない。


そしてトニーにとっては、接する世界のすべてが腐っていて、ムカつくし、許せない。


すべての発言にfワードを使わないと語れないほど、世間の腐った根性が許せないのだ。


 

特にトニーが許せないのは偽善だ。


スカーフェイス屈指の名シーンでこんなものがある。


高級レストランに、親友と奥さんを連れて訪れたトニー。しかしトニーは奥さん(トニー曰く「こいつは毎日、寝てるかコカイン吸うかしかしてねぇぜ」)が気に入らず罵り始める。やがて二人は皿をひっくり返しての大げんかに。叫び、店を出る奥さん。しんと静まる店内。周りのお客や店員が眉をしかめて見つめる中、トニーは語り始める。

何ジロジロ見てんだよ。


ここにいるお前らは全員クソ野郎だぜ。なぜかわかるか?


お前らには「なりたいものになろう」っていうガッツがないからだよ。


そしてお前らには俺みたいなヤツが必要なんだ。俺にそのクソ指をさして「あれが悪者だ」って言うためさ。


…それで?お前らは善人になったつもりか?


俺からしたら、お前らは善人なんかじゃねぇ。お前らは、コソコソ隠れる生き方、ウソばっかりつく生き方を知っているだけだよ。


俺はそんな生き方はしねぇ。


俺はいつだって本当のことしか言わない。ウソをつくときだって本当のことを言うんだ。


さぁ、悪者様におやすみを言いやがれ!


俺ほどの悪者に会えることは、お前らにはもうないだろう。


さぁ、悪者様に道を空けるんだ…



コカインと酒でフラフラになりながら、下品な言葉で他人を侮辱するトニー。

どんなに富を手にしても抜けないチンピラ風情。最低だ。


しかし冷静に考えると、トニーの主張には一理ある。


 

お上品なお金持ちたち。善人のつもり、の人たち。


しかし彼らは、状況を改善するための行動はなんにもしないで、他人を非難するだけ。

平和を乱す悪者であるトニーに立ち向かうことはなく、「ヤァねぇ!」とジロジロ見てるだけ。これで自分が善人になったつもりで、安心している。


これを偽善と言わずしてなんと言おうか!


これに比べれば、他人を非難するが、改善するための行動もキッチリするトニー(どんな「行動」かは、映画をみてのお楽しみ)の方が、まともに見えてくる。


「下品な正直者」であるトニーがどれだけ訴えようが、「上品な偽善者」である金持ちたちを動かすことはできない。


自分の信じる道をひた走り、頂点に上り詰めたトニー。誰よりも正直に生きているはずなのに、白い目で見られるばかり。

この演説は、そんなトニーの孤独な叫びにも思えて、なんだか悲しいような気持ちにもなってくる。


 

そして、この演説は、まさにこの瞬間「見ているだけ」な、観客の胸にも突き刺さる。


映画を見終わった後の、各自の実人生の中で、ふと思い返すことだろう。


「俺って結局ヘイトを振りまいているだけで、何も行動してないかも?」

「僕のこの振る舞いは偽善じゃないだろうか?」

「いま、私は改善のための行動って何かしているかしら?」


感情に持っていかれて、非難だけしかしてないじゃんってことは、俺だってよくある。

そんな時、俺の心の中のトニーが、fワードを交えて「しっかりしろ!」と活を入れてくれるんだ。


こういう、見終わった後にも自分に問いかけを残してくれる映画、いわば「おみやげ」がある映画って、大事にしたいものですなぁ。


デイブ的イイねポイント③ラッパーはみんな大好き!? 永遠のダークヒーローへ

ギャング映画は、古くから映画娯楽の中でも王道ジャンルのひとつであり、人々に愛され続けている。日本のヤクザ映画だってその一部だろう。


そしてこれらの作品は、影響力も強い。前項でも例に挙げた「ゴッドファーザー」シリーズが、実際のマフィアの美意識・あり方を変えてしまったと聞いたことがあるが、「スカーフェイス」もそのように世界中の悪~いヒト(それに憧れているだけのヒトも含む)に影響を与えている作品だ。


前述の通り、「ゴッドファーザー」とかはわりと気品のある空気をまとっていたのに対し、「スカーフェイス」はより地に足のついた(a.k.aゲスいチンピラ的なDQN風情)ギャングものなので、ストリートカルチャー方面からの支持が盛り上がったようだ。


 

とりわけギャングスタラップ等のヒップホップの文化圏との相性は良い。


例えば、自らを「スカーフェイス」と名乗るラッパーもいるし、Nasの名作「Illmatic」の代表曲は「The World is Yours」で、トニーの座右の銘(?)からとっている。サントラをサンプリングしたり、ポスターアートのオマージュをしたりと、ヒップホップにおける「スカーフェイス」のインフルエンスを挙げていけばキリがない(小ネタだが、ビースティボーイズのdvdのオープニングが「スカーフェイス」冒頭を模していたのは笑った)



多くのヒップホッパーを引きつけた要因は、前項までに記してきたトニーのキャラ(地べたからの成り上がり精神や、世の不条理を呪い、そしてそれを包み隠さぬ潔さなど)が魅力的に映ったからだろう。


ダークナイトのジョーカーだって同じ。

みんな本当のことを言っているヒトが好きなのだ…。


 

と言うことでいかがだったかな?


他にも、デパルマのセンスが光る演出(例えば”チェーンソーのくだり”は、何も映っていなくても目を背けたくなる最悪(最高)の暴力描写!長回しを効果的に使ったクラブでの暗殺シーンもすごい)や、トニー独特の倫理観(悪い男はいくらでも殺すけど女子供は絶対殺さない、妹に彼氏は許さないとか)など、この映画の魅力はまだまだ語り尽くせない。

(そういやGTAのvice cityも完全にスカーフェイスでしたな・・・。)


ぜひ170分の暗黒のロマンスを楽しんでくれ!

ではまた次回!

Be Excellent To Each Other!


 

(おまけ)


スカーフェイス関連のおもしろ動画をいくつか紹介しておこう!


学芸会でスカーフェイス!?

かわいい子供達がこんなブラックなことをやっていいんでしょうか



スカーフェイスをコメディドラマ「となりのサインフェルド」風に編集!

つっても、元の映像にBGMと笑い声を足しているだけ。それだけなのに、こんなに印象違うってすごいよね…。ちなみに1:01くらいのシーンは、ミシェルファイファーが普通に笑っててとってもかわいくて大好きなシーンです。



スカーフェイスがファミコンに!?

ミッションをこなす形でストーリーの進行を表現してるのもウケるし、ピコピコした音楽も可愛い!他の映画もパロディしてるこのチャンネルは見逃せないな…。



俺の大好きなシンプソンズが、カウチギャグ(詳しくは各自調べること)にて、80年代アクションをパロディ!BGMはスカーフェイスだけど、まぁやってることはマイアミバイスだね。劇画風の絵だけでもウケるし、シンプソンズマニアなら大爆笑な小ネタ詰め込みまくりでもう超最高!(ここぞってとこで「MAX POWER」とかシブいな~!バーンズがバックトゥザフューチャーのドクのコスプレしてたり、見所多し!一時停止しまくりたいやーつ。)

 

最後は

珍作「ジャックとジル」(2011)にて披露した、パチーノ師匠によるdopeなラップをご紹介!


日本語版


英語版


ちなみにここでもスカーフェイスのセリフを引用したリリックがあるように、スカーフェイスがまさに彼の代名詞であることがわかりますな。


それにしてもくだらね~!最高!


ワッツマイネーム!?ダンカチーノ!


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